岡崎市上六名の家
住宅街の奥まった敷地。細いアプローチを抜けると現れる、落ち着いた佇まい。
プライバシーがしっかり確保されたこの家には、四方から静かに光が入り、内に開いた「坪庭」を中心に、暮らしの場がやさしく包み込まれています。
視線と光が交差する「路地」のような坪庭

家の中心に据えられた坪庭は、単なる中庭ではなく、リビング・ダイニング・和室・書斎コーナーなど、住まいの各所からつながりと視線を生み出す「路地」のような役割を担っています。
ダイニングのテーブル越しにふと目に入る緑。

リビングに座りながら感じる柔らかな自然光。
和室からは、静かな坪庭がそっと暮らしに寄り添います。
この空間は、閉じているようでどこか開かれていて、ほどよい距離感の中で「視線が抜ける」ことにより、心地よい広がりを感じられます。
奥行きと余白があるリビング

リビングには白い壁が美しいアクセントとなり、その奥にはさりげなく配置されたテレビ。
背面は本棚となっており、程よく生活感を隠しつつ、空間にリズムを与えています。
テレビ裏の小さなカウンターはスタディコーナーです。

リビングからの目線に入るカウンターに雑貨屋アートを置き、奥に空間があることを感じさせます。
あえて気配をつくることで、「奥行き」のあるリビングが生まれています。
また、上部には吹き抜けがあり、コンパクトながらも自然光が優しく降り注ぎ、空間に余白と軽やかさを添えています。

仕切ることで、つながる和室

リビング横の和室は、必要に応じて扉で仕切れる設計。
お子様のお昼寝スペースや、ご家族・ご親族の来訪時の寝室としても活用可能です。
横には坪庭が面しており、和室にいてもどこか外とつながる感覚が得られるのが特徴的。
穏やかで、落ち着ける空間となっています。
窓の「あり方」を考えた設計

この家では、あえて外壁面の開口部を少なくしています。
代わりに、内部の坪庭に向けて開くことで、外からの視線を遮りながらも、明るさと開放感を確保しています。
たとえば、ソファの上部に配された細長い窓。

この窓から見える隣家の豊かなグリーンが、まるで借景のように室内に彩りを与え、自然と一体になったような落ち着きを感じさせてくれます。
外に閉じ、中に開く。
その設計思想が、この家に穏やかな時間をもたらしています。
ディテールで魅せる上質な日常

壁紙には紙や麻など、自然素材のものを取り入れた場所もあり、ほんの少しの工夫で落ち着きと品のある空間を演出。
たとえば、寝室の一面にはやわらかなベージュの壁紙を。
色味と素材感のバランスを考えながら、「シンプルだけど、確かな豊かさ」を丁寧に重ねています。
造作キッチンとカップボード

キッチンはクォーツ天板の30mm厚の天板を使用した造作。
収納の仕様はシンプルで、過度な装飾は避けながらも、背面の収納扉や棚の色味のコンビネーションで、程よいアクセントをつけています。
レンジフードの納まりなど、目立ちがちな設備機器をいかに普通に見せないか。

設計・施工・インテリアが一体となって調整を重ねた細部には、見えない工夫が込められています。
クローゼットにも遊び心を

キッチン裏に設けられたご家族のクローゼット。
収納としての役割だけでなく、壁紙や棚の色合いなどで少し遊び心を加え、毎日使う場所こそ気分が上がる空間へ。

来客動線と生活動線を分けた設計も、日常を快適に過ごすための配慮です。
日常の特別が暮らしの中にある

家の中心にそっと佇む坪庭をはじめ、空間の重なり、窓の位置、家具の配置、照明の取り方…
一つひとつのディテールに、設計とインテリアの確かな思想が息づいています。


日々を過ごす場所だからこそ、主張しすぎない心地よさを大切に。
その中でふと訪れる「素敵だな」と思う瞬間を、日常の中に散りばめた、そんな一邸です。
